幼少期のポケモン体験が成人後の脳に与える影響:スタンフォード大学、UCバークレー、ペンシルベニア大学による研究
2019年、米国のスタンフォード大学、UCバークレー、ペンシルベニア大学の研究者たちは、幼少期にポケモン(ポケットモンスター)に熱中していたことが、成人後の脳の機能的構造にどのような影響を与えているかを調査した研究を発表しました。
この研究は、「Extensive childhood experience with Pokemon suggests eccentricity drives organization of visual cortex」というタイトルの論文にまとめられており、幼少期のポケモン体験が成人後の脳の視覚野に特有の影響を与えることを示しています。
研究チームは、5歳から8歳の頃に大量のポケモンを見ていたポケモン経験者11人(平均年齢24.3歳、男性8人、女性3人)と、これまでポケモンのゲームをプレイしたことがないポケモン未経験者11人(平均年齢29.5歳、男性4人、女性7人)を対象に実験を行いました。
実験では、参加者に8つのカテゴリー(顔、体、ポケモン、動物、漫画、単語、車、廊下)の画像を見せ、その際の脳活動をfMRI(機能的磁気共鳴画像法)でスキャンしました。
解析の結果、ポケモン経験者はポケモン未経験者に比べて腹側側頭皮質(VTC)でポケモンに対して明確で再現性のある反応パターンを示すことが明らかになりました。
VTCは視覚処理において重要な役割を果たす脳の領域です。
この結果から、ポケモン経験者全員がVTCにポケモンを識別するための特有の脳活動パターンを形成していることが示唆されました。
さらに、ポケモン経験者の視覚野の反応パターンは、他のカテゴリー(顔、動物、体など)に対する反応パターンとは明確に異なっていました。
これは、ポケモンが視覚野において独自のカテゴリーとして表現されていることを意味します。
一方、未経験者ではポケモンに対する反応パターンは他のカテゴリーと区別できませんでした。
この結果から、長期的にポケモンを見た経験が視覚野にポケモン特有の情報表現を作り出したと考えられます。
また、機械学習を用いて視覚野の活動パターンからポケモンを識別できるかを調べたところ、ポケモン経験者の方が未経験者よりも高い精度でポケモンを識別できることが分かりました。
この結果は、ポケモン経験者の視覚野にポケモンに関する情報がより多く、明確に表現されていることを示唆しています。
最後に、研究チームはポケモン経験者における視覚野の反応位置を分析しました。
その結果、反応位置が子供のころにポケモンをプレイしていた際の網膜偏心度(目の視線の中心からどれだけ離れているかを示す尺度)と関連していることが分かりました。
これは、幼少期の視覚経験の特性(ポケモンをどの位置で見ていたか)が大人になってからの視覚野の反応位置に影響を与えることを示しています。
以上の結果から、幼少期のポケモン経験が成人後のVTCの機能的構造に影響を与えていることが明らかになりました。
特に、網膜偏心度に基づく視覚野の機能的表現と一貫した視覚経験が組み合わさることで、特化した共通の反応パターンを形成することが示されました。
この研究は、幼少期の経験が成人後の脳の構造と機能にどのような影響を与えるかを理解する上で重要な一歩となります。
研究の結果は、幼少期に熱中した対象が成人後の脳に持続的な影響を与える可能性を示しており、特に視覚経験の重要性を浮き彫りにしています。ポケモンを例にとると、子供の頃に多くのポケモンを見て、その視覚的特徴を覚えることが、脳内の視覚処理領域に特定の変化をもたらし、それが成人後も続くということが分かりました。
この知見は、教育や育児において、視覚的な経験が脳の発達にどのように影響を与えるかを考える際に重要な示唆を与えるものです。
結論
幼少期のポケモン体験が成人後の脳に特有の影響を与えるという研究結果は、視覚経験の重要性を示すとともに、特定の興味や趣味が脳の発達に与える長期的な影響を理解する上で貴重な情報を提供します。
これにより、教育や育児の分野においても、子供の興味や経験を尊重し、それが脳の発達にどのように寄与するかを考えるきっかけとなるでしょう。
ポケモンを通じて得られたこの知見は、他の視覚経験や趣味にも応用できる可能性があり、さらなる研究が期待されます。
Image:Pokémon
Sauce:ITmedia
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