円相場急変で世界が警戒:1ドル170円の現実味とは?

円相場急変で世界が警戒:1ドル170円の現実味とは?

かつて日本の当局者たちは、「円相場が1ドル=150円を超えることはない」と公言していました。

しかし、現実はその予測を大きく裏切り、円安は150円を突破し、160円台にまで突き進みました。

今、為替市場のトレーダーたちは、円がさらに下落し、1ドル=170円に達する可能性について語り始めています。

関連記事

米国の金利政策と日本の経済状況

1ドル=170円という為替レートは、単なる憶測ではありません。

アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)は高い政策金利を維持し続け、日本の経済はリセッション(景気後退)をかろうじて回避している状況です。

さらに、日本は世界最悪の公的債務を抱え、それが膨らみ続けています。

日本政府のスタンスと円安の影響

岸田文雄首相率いる日本政府は、円が下がり続けることを容認しているように見えます。

岸田政権はその影響を認めたがらないものの、2023年に約14%進行した円安が輸出を後押ししていることは明らかです。

また、円安効果により、日本は観光ブームを享受し、日経平均株価が史上最高値を更新するなど、経済指標は好調を示しています。

しかし、円が1ドル=170円にまで下落すれば、その影響は日本国内にとどまらず、中国やアメリカを含む世界全体に波及することが予想されます。

中国の経済戦略と為替レート

円安が続けば、中国の習近平国家主席は、経済政策の優先課題を見直す可能性があります。

中国経済は不動産危機による影響で勢いを失っており、習政権は経済成長を安定化し、デフレを解消するための方策を模索しています。

そのためには、人民元の下落という迅速な手段が考えられます。

一方で、元安政策を取ると、大手不動産開発会社の外貨建て債務のデフォルトリスクが高まり、新たな経済危機を招く可能性もあります。

また、米国が大統領選挙を控えている状況では、元安がアメリカの政界に波紋を広げる恐れもあります。

トランプ前大統領は中国製品に対する関税引き上げを公言し、バイデン大統領も中国に対する技術アクセスの制限を強化しています。

アジア全体への影響

もし中国が大幅な元安を容認すれば、1997~98年のアジア金融危機以来、最大規模の通貨下落が発生する可能性があります。

タイ、インドネシア、韓国などのアジア諸国は、為替レートの競争に参加せざるを得ない状況に追い込まれるかもしれません。

円キャリートレードのリスク

「円キャリートレード」と呼ばれる投資手法は、長期にわたる日本のゼロ金利政策により、投資ファンドが円を安く借り入れ、その資金を海外の高利回り資産に投資することを可能にしました。

しかし、急激な円高が発生すれば、ニューヨークからロンドン、香港まで、世界の市場に混乱をもたらす可能性があります。

日本銀行の政策と今後の展望

日本銀行(BOJ)の植田和男総裁は、2023年4月の就任以来、日銀の巨額なバランスシートを縮小する機会を見送ってきました。

これは、円相場が1ドル=170円に向かう可能性を高める要因の一つとなっています。

政策の影響と必要な改革

皮肉なことに、円安が進むほど、日本政府は経済力を強化する責任を軽減されるように感じています。

特に、2013年以降の日銀の量的緩和拡大によって、労働市場の現代化、行政手続きの効率化、イノベーションの促進、女性のエンパワーメントといった必要な改革が進められなかった結果、もう一つの「失われた10年」が生まれてしまいました。

もし日本の自民党政権が、公平な競争の場を整え、経済の競争力を高める改革を進めていたならば、今日の日本経済はもっと力強く成長していたかもしれません。

しかし、現実は新たなリセッションの瀬戸際にあり、アジアの生産性競争でも劣勢に立たされています。

結論

円の動向は、世界の市場や経済外交に大きな影響を与える可能性があります。

2024年も後半に差し掛かる中、私たちが今直面しているのは、これからの経済の波に備えるために、シートベルトをしっかりと締めるべき時であるということです。

情報元