Steamの非公式データベースサイト「SteamDB」を運営するPavel Djundik氏は、2024年7月12日に裁判資料からValveの従業員数などの情報が明らかになったと報告しました。この情報は海外メディア「The Verge」が報じており、Valveの従業員数が意外に少ないことが注目を集めています。
この裁判資料は、FPS『Receiver』シリーズで知られるデベロッパーWolfire Gamesが2021年に独占禁止法および不正競争防止法違反を訴えてValveを相手取り提訴した際のものです。この訴訟では、Steamでゲームを販売するメーカーに課せられている売り上げの30%という手数料設定などが争われました。なお、この訴訟に関しては裁判所により棄却されましたが、裁判資料を入手したThe Vergeによれば、その中には「Employee Headcount and Gross Pay Data, 2003-2021」と題された表が存在していました。この資料は多くの部分が黒塗りされていましたが、その表題から各年のValveの従業員数と支払われた給与総額を表しているものとみられています。
資料によると、Valveには大きく分けてAdmin、Steam、Games、Hardwareの4つの部署が存在します。それぞれ事務担当、Steam運営、ゲーム開発、ハードウェア開発を意味しているものと思われます。データはSteamが正式に運営開始された2003年から2021年までの各年について記載されており、Steam運営部門は16人から始まり、2015年の142人をピークとして、2021年には79人に減少したとされています。
ゲーム開発部門については、2003年には57人で、2021年時点では181人とされています。ちなみに、Valveの代表作『Half-Life 2』は2004年に発売され、その後も『Portal』や『Team Fortress 2』『Left 4 Dead』などを手がけています。この時期のゲーム開発部門の従業員数は100人程度だったようです。これまでのピークは2019年の201人で、この前後には『Artifact』や『Half-Life: Alyx』がリリースされています。
ハードウェア開発部門は2011年に設立されました。Valveはその後、SteamコントローラやValve Indexなどのハードウェア製品を手がけ、Steam Deckの発売も記憶に新しいところです。従業員は最初7人から始まり、Steam Deckが発表された2021年時点では41人だったそうです。そして、2021年時点でのValveの各部門の従業員数を合計すると336人となります。大手ゲームメーカーの従業員数が数千人規模であるのに対し、Valveの従業員数は非常に少ないと感じられます。例えば、任天堂はグループ全体で約7700人、カプコンでは約3500人（共に2024年3月末時点）とされており、Valveと同じくゲーム開発やPCゲームストア運営を行っているEpic Gamesは約5000人と見込まれています（2023年9月時点）。
このように、他の大手企業と比較すると、Valveの従業員数はかなり少ないです。Team17やRebellionなど、やや規模の大きなインディー系スタジオの従業員数に近く、ゲーム開発部門に絞ればさらに小規模です。しかし、Valveは年に何本も新作をリリースする企業ではなく、特に近年は新作のリリース間隔が長くなっています。それにもかかわらず、Steamから安定した収益を得つつ、少数精鋭で運営されていることがうかがえます。
さらに、裁判資料から明らかになったもう一つのデータとして、従業員に支払われた給与総額があります。ゲーム開発部門では2021年に約1億9200万ドル（約300億円）が支払われたとされています。単純計算で従業員数で割ると、1人あたり年に約106万ドル（約1億6700万円）が支払われた計算になり、ゲーム開発部門が最も高い給与を受け取っていることがわかります。
Valveは新入社員向けの手引き書で、同社の従業員1人あたりの収益性がGoogleやAmazon、マイクロソフトを上回ると述べていますが、非上場企業であるため、業績や従業員数などの企業情報は基本的に公開されていません。今回は裁判資料を通じて、その一端となる貴重な情報が明らかになりました。この情報は、Valveの運営体制や従業員の実態を知る上で非常に興味深いものとなっています。
source: Automaton
