世界的システム障害が航空便や医療に影響、脆弱性が明らかに

世界的システム障害が航空便や医療に影響、脆弱性が明らかに

7月19日に発生した大規模なシステム障害は、世界中の航空、医療、物流、金融など多岐にわたる業界に大きな影響を及ぼしました。この障害により、相互接続されたネットワークの脆弱性が浮き彫りとなりました。現在では、障害は解消され、各サービスが再開しつつありますが、欠航や遅延した航空便、未処理の医療予約や注文などへの対応がまだ残っており、完全復旧にはなお時間がかかると見られています。

システム障害の原因は、米サイバーセキュリティ企業クラウドストライク(Cloudflare)のセキュリティソフト「ファルコンセンサー」にありました。このソフトの更新により、マイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」の機能が停止し、画面が青くなるトラブルが相次ぎました。クラウドストライクはすぐにソフトを修正し、マイクロソフトも根本的な原因を修正したと発表しました。クラウドストライクのジョージ・カーツCEOは、米NBCテレビの取材に対し、「影響を受けたすべての方々に深くお詫びする」と陳謝しました。

米ホワイトハウスの当局者によれば、バイデン大統領はこの障害について報告を受けており、クラウドストライクと連絡を取り合っています。また、国土安全保障省サイバー・インフラ安全局(CISA)は、ハッカーがこの障害を利用してフィッシングなどの有害な活動を行っていると指摘しました。米税関・国境警備局(CBP)は申請処理が遅延しており、国際貿易や渡航に関する問題の軽減に取り組んでいると述べました。

この障害の影響は非常に広範囲に及びました。クラウドストライクの株価は11%急落し、同社は世界に2万社以上の顧客を抱えています。D・A・デビッドソンのアナリスト、ジル・ルリア氏は、「今回の件は世界のコンピューターシステムがいかに複雑に絡み合い、それがいかに脆弱かを示した」と指摘しています。クラウドストライクとマイクロソフトは今後、同様の障害が生じないよう多くの対策を取る必要があると述べました。

航空業界への影響も大きく、航空データ分析会社シリウムによると、7月19日に予定されていた11万便余りのうち5000便が欠航となりました。特に米デルタ航空は運航便の20%を欠航にするなど、大きな打撃を受けました。ロサンゼルスからアムステルダム、シンガポールに至るまで、各地の空港ではシステム障害により手書き搭乗券で対応する事態となり、手続きが遅延しました。

さらに、テレビ放映が中断され、米物流大手フェデックスの配達が遅延するなどの影響も出ました。金融業界でも、LSEGグループがニュース・データ・プラットフォームWorkspaceに障害が発生したと発表しました。ただし、ロンドンでは正午までに問題の大半が解消され、ロンドン証券取引所の取引に影響は出ませんでした。ニューヨーク証券取引所やナスダックも取引は正常に行われていると発表しました。

米金融大手のバンク・オブ・アメリカやゴールドマン・サックス、シティグループなどもシステムや業務に大きな影響は出ていませんでしたが、JPモルガンでは一部のATMが利用できなくなりました。米金融機関が参加するセキュリティー情報分析の共有を目的とした組織「FS-ISAC」の広報担当者は、今回の障害による金融システム全体への影響はなかったと述べました。

医療機関では、コールセンターや患者専用アプリが障害に見舞われましたが、スペインの空港運営会社アエナや米ユナイテッド航空、豪コモンウェルス銀行を含む多くの企業では同日内に問題が解消し、サービスが再開しました。

この一連の障害は、世界中のシステムがどれほど相互に依存しているか、そしてその脆弱性がどれほど大きいかを改めて示す出来事となりました。今後、企業や政府機関は、このような障害が再発しないよう、より強固な対策を講じる必要があります。

source: Reuters image: X(@doganuraldesign)


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